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胃がんリスクフォーラム報告①~東京都目黒区の事例

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2015年09月10日

 

胃がんリスクフォーラム報告①~東京都目黒区の事例

胃がんリスク(ABC)検診
導入から運用まで
東京都目黒区の事例

伊藤史子
認定NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構 理事
(元目黒区健康推進部長・保健所長)

伊藤史子

 胃がんがピロリ菌感染に由来することは広く知られている。1994年にはWHO(世界保健機構)の専門部会IARC(国際がん研究機関)は、ピロリ菌はタバコ、アスベスト等と並ぶ発がん性の最も強いグループ1に属する物質であることを警告している。また、2014年には世界各国に向け、可能なところからピロリ菌検査と除菌療法による胃がん予防を行うことを推奨している。日本発のリスク検診は国際的に高い評価を受けていることが分かる。

 さて、目黒区は全国に先駆けて2008年行政主導で胃がんリスク検診を採用し、2012年に5年一巡した時点でデータをまとめた。総受診数30,027人、胃がん発見数74(早期53)人、発見率0.24(早期71.6)%であった。X線検診と比べて、胃がん発見率は4.3倍、1胃がん発見コストは12分の1であり、リスク検診は効率的効果的な検診であることは明らかである。どこにもモデルがない時代に始めた検診なので、とにかく精度のよい検診となるよう努めた。導入・運用時に留意点として経験から挙げられる主なものは、1)多くの人が受けやすい特定健診と同時実施を基本とした。2)血液検査は精度管理上1施設で行う。3)検診は原則、目黒区医師会傘下の個別医療機関で実施し、検診開始時に区主催の導入研修受講を義務付けた。業務用に作成した「胃がんハイリスク検診実施マニュアル」を研修テキストとした。4)精密医療機関リストを作成した。区内の大手の病院には足を運び所管診療科の部長・院長に事業の説明と精密検査への協力を依頼した。5)データ管理のため、「がん検診データベース(DB)」を予算化し作成した。入力検査データは実測値とした。6)安定的な事業継続のため外部の専門家・関係者を入れた検診検討会を設置し問題点等を把握する。7)行政の担当者の異動で事業統計内容が継続しないことも生ずる。初年度に医師(行政・医師会)の指導の下「統計データ作成マニュアル」を作成しておく。等である。6)と7)は大変重要な点であるが目黒区で不十分で、問題も生じたことが反省された。

 今リスク検診で最も大きな課題は、除菌経験者を検診対象外とすることである。このためABCD群の他に除菌経験者のE群を設定し、医療管理を明確にした。

マトリクス

 もう一点は、問診で除菌経験者を除いたとしても、A群には無自覚の除菌経験者(既感染者)あるいは検査値による偽陰性A群が含まれ、胃がんが発症も見られることです。この偽陰性A群はどのような検査値特性を示すか、目黒区5年間の検診DBの除菌A群を用いて解析した。その結果偽陰性A群はピロリ菌抗体が3以上10未満(陰性高値群)であることが明らかになった。

除菌有無別Hp抗体価分布

偽陰性群の発現頻度はA群中の11.3%、受診者中の7.0%であった。この結果を今後のリスク層別化に反映させる必要性が強く示唆された。

本件に関する問い合わせ先

〒108-0072 東京都港区白金1-17-2 白金タワーテラス棟609号
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構
理事長 三木一正
TEL:03-3448-1077 FAX:03-3448-1078
E-Mail:info@gastro-health-now.org

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