ホーム > 重要なお知らせ > 

第2回 胃がんリスク検診フォーラムの報告 ~その4

<< 一覧へ戻る

2016年03月03日

 

第2回 胃がんリスク検診フォーラムの報告 ~その4

横須賀市における胃がんリスク検診の導入と運用・課題
横須賀市医師会 中央内科クリニック
松岡幹雄

松岡先生

 横須賀市の胃がん検診は平成13年10月より以前から行われていた胃X線検査(以下X線法)に加えて、血清ペプシノゲン法(以下PG法)を取り入れ、受診者の希望でどちらかを行っていた。X線法の受診率は2%前後で、胃がん発見率は0.1%前後であり、平成18、19、22年度の発見胃がんは0件であった。(表1)

スライド1

 またそれに加えて、撮影技術の問題や読影医の減少などの問題もあり、PG法と血清ヘリコバクターピロリIgG抗体(以下HP抗体)を組み合わせた胃がんリスク検診の導入を行政側、医師会側にそれぞれ進言し、ワーキンググループを立ち上げて協議を始めた。医師会はもちろんのこと行政側も非常に協力的で、概算でのX線法とPG法の費用対効果も出してもらった。(表2)

スライド2

 医療関係者には、三木一正先生を始め、第一線で活躍されている先生方に講演をお願いして啓発した。行政側にも講演に参加してもらった。その結果、平成24年度からX線法を全廃して、40歳以上の市民全員を対象として、胃がんリスク検診が行われることになった。
 検診対象除外者、陽性判定基準、分類、判定等は胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル2009に従った。A群のうち、除菌歴のあるもの、および胃・十二指腸潰瘍の既往のあるものは、修正してB群とした。BCD群は要精密検査とし、精密検査で行った内視鏡写真は医師会に提出し、3人1組からなる検診読影委員会でダブルチェックすることとした。
24年度、25年度、26年度の受診率は、15.6%、8.5%、6.9%で、A群の割合は53%、53%、57%であった。精検受診率は、79.2%、77.5%、76.4%で、それぞれ108件(早期がん85件、進行がん23件)、45件(早期がん31件、進行がん14件)、30件(早期がん27件、進行がん3件)の胃がんが発見された。胃がん発見率は、0.496%、0.448%、0.405%だった。胃がん以外にも、食道がん、胃悪性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、十二指腸がんなどが発見された。検診実施医療機関は136~137施設、精密検査実施医療機関は62~65施設だった。(表3)

スライド3

 胃がん1件を見つけるに要した費用は、概算でX線法、PG法は平成23年以前の5年間の平均で、それぞれ2,830万円、151万円であった。胃がんリスク検診では24年度は112万円、25年度は98万円であった。(図1)

スライド4

 24年度のA群の中から2件の胃がんが見つかった。1件はHP抗体6.2で、いわゆる陰性高値であった可能性がある。(表4)
 
スライド5

 28年度からは、日本ヘリコバクター学会の注意喚起を踏まえてHP抗体3以上を陽性にすることとした。
 横須賀市の胃がんリスク検診は、胃がんの発見という観点からみると一定の成果を得ていると思われる。また胃がんの発見という目的以外にも、ピロリ菌陽性者を抽出し除菌を行っているので、今後の胃がん抑制効果も期待できる。

本件に関する問い合わせ先

〒108-0072 東京都港区白金1-17-2 白金タワーテラス棟609号
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構
理事長 三木一正
TEL:03-3448-1077 FAX:03-3448-1078
E-Mail:info@gastro-health-now.org

<< 一覧へ戻る